YouTubeとスプーと国民性と
users少しタイミング遅いですが、みんな大好きYouTubeからスプー関連が削除された件についてつらつらと考えてみました。
小声でお知らせです。今世紀最大の魔道師はいだしょうこ女史による、絵描き歌という呪印によってこの世に生み出された召還獣「スプー」のYouTube動画が、NHKからのクレームによって削除されているらしいですね。
小鳥ピヨピヨ(a cheeping little bird): スプー、消される
http://coolsummer.typepad.com/kotori/2006/06/post_2.html
削除自体はすごくまっとうでNHKは正しいし、「NHKも尻の穴が小さいな」なんて批判はもってのほか。消えた事実そのものは残念ですが、どう考えても著作権的に正しくないことなので、削除依頼そのものについてあーだーこーだ言う気はありません。今回気になったのはそれとはちょっと違う視点です。
日本でのアクセス殺到というYouTubeですが、多くの人はYoutubeと聞いて何を連想するでしょうか。しょうこお姉さんやスプーを筆頭に、エヴァンゲリオンやハルヒを初めとしたテレビ番組のアップロードが主でしょうし、日本国内では「テレビや映画が無料で見られるサイト」というような印象が強い気がしています。こないだ電車に乗っていたら、向かいの席の中学生も「YouTubeって知ってる? テレビとか無料で見られるんだぜ」と動画対応iPodを片手に力説していたのが非常に印象的でした。
だけど本家本元のアメリカでは、そういう使い方もされてはいるでしょうがそれが主流ではないっぽい。というのはYouTubeの「Most Viewed」を見るとわかると思います。
Most Viewed(YouTube)
http://www.youtube.com/browse?s=mp&t=a
1位は往年のダンスミュージックを背景に元気な白人男性が踊りまくる「Evolution of Dance」で、その他もテレビ番組というより一般の人が作った面白映像っぽいものが主流。ひょっとしたらこれらもテレビ放送されたものなのかどうかはわからないし、テレビ番組もたくさんアップロードされているのでしょうけれど、少なくともテレビ番組ではない動画にもニーズがあって、それが最も見られているという結果は事実としてありそうです。
地上波が中心でチャネルも少なく、番組も1回流れたらはいおしまい、という日本のテレビ文化に対して、多チャンネル放送やTivoが盛んなアメリカではそういうニーズがないというのもあるでしょうが、それとは別に、動画に対する文化も米国と日本で大きく違うなと思ったのがこのランキングでした。
思うに、ネット上におけるテキスト文化と、静止画・動画も含めたマルチメディアコンテンツの文化って、大きな壁があるのではないかと。テキストは基本的に自分を出さなくて済む匿名性が高いコンテンツです。2ちゃんねるはまさにそうですし、ブログやmixiも2ちゃんねるに比べればアイデンティティ高いですが、自分で出したい部分だけコントロールできるし、いくらでも事実ではないものを創造できる。
でも動画や静止画になると、作り手の存在がテキスト以上に出てしまいます。静止画はまだ動画に比べれば面白い写真載せるだけで済むかもしれませんが、動画は音声も入るし、面白い光景を撮影するにしてもその人の存在感がどうしてもコンテンツに入り込んでしまう。
海外での生活経験がないので偏った視点かもしれませんが、どうもそういう「自分」を出していくコンテンツって、日本人にはまだ馴染みがないような気がします。ネット上で面白いマルチメディアコンテンツって、VIP STARみたいに元々あるものをいじったりインスパイアして作るものが多くて、イチから自分で作り上げたコンテンツってほとんど見たことがないような。
日本でもフジテレビが「Watch me!TV」という名称で動画投稿サイト作るみたいですが、日本でYouTubeが人気なのはテレビ番組が見られるという面が主流であって、必ずしも動画投稿そのものが盛り上がっている訳ではないと思います。フジテレビ主導である以上、テレビ番組系をアップロードできる環境にはならないはずで、そうすると結局コンテンツが不足する、ということにもなりかねない。「動画投稿が人気」というキーワードはちょっと引いてみたほうがいいのかなあという気がするのでした。
それと同時に実感するのは「テレビ番組をネット(を含めたアーカイブで)みたい」というニーズは、やり方の難しさはあれど確かにあるのではないか、ということ。いつもテレビ番組配信に関しては「トレソーラの失敗」が例に挙げられますが、2回の試験サービスを両方とも使った立場から言わせてもらうと、あれはテレビ番組の配信がいけないんじゃなくて、あまりにもユーザーの使い勝手を考えていないインターフェイスと提供方法がいけないので、それをもって「テレビ放送の再配信はニーズがない」と切り捨てるのは安直過ぎます。余計なソフトのインストールが必要とか1回のダウンロードで必要な本数制限があるとかFlashバリバリでサイトが重すぎたとか、そりゃもうインパク並みでしたよ、あれ。