おぼえていますか「愛・おぼえていますか」
usersマクロスがアメリカに与えた影響の大きさを知り、さらに先日とある飲み会で「やっぱり美樹本晴彦の絵はいいよねえ」なんて盛り上がった勢いで、ついつい借りてしまいました。劇場版「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」。
この劇場版は、テレビ番組のストーリーを1つにまとめて再構成したパラレルワールド的なお話。ストーリーの大筋は変わってませんが細かい設定などが作り直されているだけでなく作画も大幅にパワーアップ。個人的には後半ぐだぐだになるテレビ版よりこっちのほうが好みです。というかマクロスといえば「愛・おぼえていますか」でガチ、といいたいくらい。
で、劇場版を久々に見てみたら、やっぱり思い出で過大評価していた面もあるなーと思った。あまりに設定が多いがゆえに映画の2時間では消化しきれていないので、マクロスを知らない人には「???」となってしまいそう。なぜマクロスが戦っているのか、マクロスの中で人が生活しているのか、なぜマクロスが変形するのか、などなど。
人物描写の時間も短く、特に未沙と輝がお互いに心を開くシーンがあまりに短すぎて、結果として輝がものすごい尻軽というか浮気症に見えてしまう。ミンメイへの気持ちと未沙への気持ちってのは明らかに違うものなので、そのあたりがうまく伝えられてないかもなあ。といつつそれをカバーしようとするととても2時間じゃ足りないだろうし、むしろ見ていて「ここいらないよね」というシーンも少ないので、割り切るべき部分なんでしょうね。エヴァンゲリオンやデスノートのように映画でも前後編が当たり前のようになった今こそ見てみたかった気もするなあ。
と、細かいところが昔より気になりつつも、やはり作品のクオリティは抜群。戦闘シーンはかっこいいし、テレビ版では日本語をしゃべっていたゼントラーディもになったことで、「異文化交流」という設定にリアリティが出ている。
そして何よりマクロスの最も大事な部分である歌がすばらしい。こういう歌要素を交えた作品って、肝心の歌がショボいと台無しなんですが、そこはもう飯島真理の珠玉の名曲集なので問題なし。「愛・おぼえていますか」「天使の絵の具」もいいんだけど、個人的には「OG LOVE」が好きだなあ。
前半は時間の短さでちょこまか設定が気になっちゃうけど、後半はそんなことも忘れて見入ってしまったし、ブリタイ艦長の名台詞にはもう人目を忘れて泣いてしまった。「愛・おぼえていますか」の演奏が始まるあたりからのクライマックスはもう最高のデキですね。いやもういい作品ですほんとに。
ロボットアニメということでどうしてもガンダムの亜流的に見られてしまうこともあるマクロスですが、巨大ロボットの中に人が住むという一見荒唐無稽な設定ながらもそれをきちんと理由づけるシナリオ。文化を持たない種族との戦いと戦いの中で通じ合う異文化交流。まったく性格の異なる2人のヒロインとの間に繰り広げられる恋愛模様。そしてバルキリー・ガウォーク・バトロイドへの変形がみごとなくらい美しいロボットデザイン。個人的にはガンダムよりマクロス派でありますので、25周年を期にもうちょい話題になるといいなあと思いました。
あと、見ていてふと思ったのがキャラクターの設定。ここらへんは表現が難しいんですが、金髪のロイが恋するのは黒人のクローディア、マクロス最高のアイドルは中国人のリン・ミンメイ、男(ゼントラーディ)より女(メルトランディ)のほうが戦闘力が高い、などなど、一般的に「差別表現」されやすいキャラクターがこの作品では中心的な存在になっている。異文化交流を扱う作品だけに、実はそういう設定もわざとやっているのかなー、とか思いました。