本: 2007年11月アーカイブ
「新垣結衣のデビュー曲が下手すぎて泣けた」という印象しかなかったケータイ小説の映画化作品「恋空」ですが、このエントリー読んだら俄然興味出てきた。
脳内会議 ? 『恋空』を読んだ
http://alittle.bitter.jp/blog/?p=76
というわけで上のエントリーに紹介されているURLからさっそく読書開始。 せっかくだからきっちり最後まで読み尽くしてやる!!! という気概で読み進んだんですが。
だめだよママン......。途中で力尽きたよ......。
文章の稚拙さとかはそこまで気にならなかったんですが、いかんせんストーリーが安直すぎる。いや実際にはレイプだの流産だのいじめだのと普通には起きない刺激的なイベントが盛りだくさんなんですが、でもドラマとしてはそれが逆に安直なんですよね。彼氏ができて元カノが嫉妬するあたりから先の展開が読めすぎて、あとは単に文章を追っていく作業でしかなくなってやめてしまった。
その一方で、mixvoxさんのところで知ったこのエピソードはもう釘付け。無我夢中になって読んでしまった。
近所の女子高生がギター教えてくれと訪ねてきた
http://ton4soku.blog84.fc2.com/blog-entry-446.html
こちらはタイトルそのままで、ギター教えてと頼んできた近所の女子高生との間に芽生える恋物語が描かれているんですが、状況そのものは非常に地味ながらすごい萌える。まあ女子高生カナちゃんのキャラによるものも大きい気がしますが、読んでいるときの熱中度が明らかに違った。
ケータイ小説のほうが文字数に制約もあるし一概には比べられないんですが、1つにはあまりにドラマ的な展開は実際に小説やドラマになるとありきたりすぎて陳腐化してしまうこと、そしてもう1つは明らかなる文章力の違いなんだろうなあと思った。
恋空にどうしても入り込めなかった理由の1つは、やっぱり描写力の貧困さで、シーンの移り変わりとかが唐突すぎるのね。主人公が彼氏を気になった理由とかもないし、読んだ限りの後半では主人公が最高にいい人っぽく描かれているけど、おいまてお前同級生をいたずらで退学にしてんだろゴルァ、みたいな。キャラにもシナリオにも説得力がないと感じてしまう。
それに対して上記のまとめサイトを含めた2ちゃんねる系のストーリーは、良作と呼ばれるものに関しては文章力はそれほどではないかもしれないけど、説得力も人間描写もきちんとしている。(あくまで良作の話で釣り系のやつは読んでてすぐわかるくらいショボいのもありますが)。それは2ちゃんねるという掲示板で展開されるだけに、ストーリーの気になる部分とかを読者がその場で反応して補完できるというメリットも大きくて、そこで描かれるからこそ一般人の書いたお話でもみんなの力を得てよい作品になっていくのかもしれない。
ケータイ小説は恋空しか読んでないし、恋空も途中で挫折したからすべてをみたわけではないけれど、レベルとしては「中高生の頃にクラスの女の子が書いていた少女漫画」レベルかなあと思いつつ、一方できっとすぐに廃れるのかなーとも同時に思います。ケータイで手軽に読めるというのはやはり大きな魅力だし、ケータイ小説で小説読むようになったら、やっぱり文章的に優れた作品にも魅かれていくだろうし、そういう小説への入り口としてケータイ小説がある、という位置づけであればいいかな。
個人的には「ガン黒」みたいなもんで、あれが流行した当時は「日本はどうなるんだ」という風潮だったけど、今はもうガン黒なんて絶滅人種に近くて、芸能人とかでも「昔はガン黒でした」なんて子が今は普通のオシャレしたりしている。
ただそれはそれとして、やっぱり日本語の文章としては問題があるし、そこは「時代の流れだから」といって身を任せられない古い体質の自分がいる。「しゃべられる」が時代の流れとともに「しゃべれる」に言い換えられていくという例はあるとしても、文法や文の構成というルールが崩れてしまうのは別問題だと思う。日本人は生まれたときから当たり前のように使っているし、英語と比べて順番入れ替えても意味が通りやすいから気づきにくいですが、日本語だって英語のように文のルールはあるわけです。
小説への入り口としてのケータイ小説という存在はありとしても、あれを小説とは理解できない自分は理解力のないオッサンなんだろうなあ、とおもいつつもそれが自分の正直な気持ちであります。
すでにいろんなブログで取り上げられていますが、献本いただいておりました「労働法のキモが2時間でわかる本」やっと読み終わりましたのでご報告。
タイトルは「2時間」とありますが、読むのが早い人はもっと早く読み終わるかも。要は2時間というのは「短い」と言うことをあらわしているのであって、「八百万」が800万じゃなくて「たくさん」みたいなものですか。
労働法というと堅苦しく聞こえるんですが、内容はすごく身近なものに特化しているのでわかりやすい。第2章の「その給料、最初の話と違うじゃん」とか、第3章の「サービス残業と持帰り残業どちらがお得?」とか他人事じゃない内容で、結構のめりこんで読んでしまった。自分もとある会社に転職したとき、面接で給与を手取りで交渉したのに、入社してみたらそれが額面の数字だったときはマジでドン引きました。ああやっぱり書類作ってきちんと交渉すべきだったなあと後になって反省。
まあそんな戯言はさておき、普段のサラリーマン生活って、ルールそのものは知っているけど、なぜそういうルールなのかは知らないことが多い。残業は100時間超えちゃいけないと言われるけど、じゃあそれはなぜだめなのかとか、休憩時間を過ぎてもご飯から戻ってこない人がいたとき、それがどうだめなのか。そういう日々の「なんとなく」ですごしていた疑問について、きちんと法律にのっとった理由を知っておくということはなかなか大事なことだし、役にも立つと思います。
内容が法律という堅苦しいテーマを扱っているだけに読みやすくする努力もされていて、OLのナナという主人公が入社した会社の中で少しずつ労働法を学んでいくというストーリー仕立てで進行していきます。正直これは人によって受けるか受けないか微妙なところで、余計なキャラクターが出てくることでテンション下がる人もいるでしょう。実は自分も最初「こんな余計なキャラクターいらないよ」とか思ってたんですが、読んでいくうちに微妙に感情移入して萌えてしまった。しかし現実で考えると、何かあるたびに「それは労働法に則って問題ありませんか」とかみついてくる女の子ってちょっとアレではありますが。
本筋と関係ないところで気になったのは本書のタイトル。というのも目次を見ると各章の見出しは「『ウチは美人を採用します』そんなのアリ?」とか、「その給料、最初の話と違うじゃん」とか、「釣り三昧のあの人がクビにならない理由」とか、割とキャッチーで刺激的なタイトルが並ぶのに、本のタイトルは「2時間でわかる」という言葉こそあれ、「労働法」というちょっと堅苦しい言葉を使っていること。
「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」を代表として、ここ最近のこういう本はいかに見出しをキャッチーにして「釣る」か、みたいなのが目立つ。確かにそれは効果あるし、本はそもそも手にとってもらえないと意味がないのだから、結果こそすべてという発想であれば、タイトルをいかに刺激的にするかというのは重要な要素だと思います。
でもこの本は目次こそ刺激的だけど、タイトルはそういういわゆる「釣り」をしていない。きっと「見出しをもっと刺激的に」という発想も当然あったと思うんですが、それをあえてせず、どちらかというと正攻法に近いであろう「労働法」という言葉を使っているあたりに、「労働法そのものにもっと興味をもって欲しい」という作者の気持ちがこもっているのかなー」と思いました。
タイトルが刺激的な本はついつい手に取りがちですが、中身がその刺激についていかないと落差が大きくて、「タイトルの割にイマイチだったな」なんて感情も残りがち。そうではなくタイトルをあえてシンプルにすることで、手にとってもらえる機会は減るのかもしれないけど、そのぶん内容に対しては真摯に受け取ってもらえるのかな、とか思いました。
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